鍋春菊のメルティング・ポット

アニメだろうが実写だろうがそれがなんであろうが面白けりゃいい!そんなハンパモンのブログ

夢にまっすぐ。

タイトルは下町ロケットのキャッチフレーズ。

私は普段TVドラマに熱中することはないのだが、この下町ロケットは久々の大当たりドラマであった。半沢直樹からのファンである私は、既にこの原作を2年程前に読んでおり、今回のドラマ化の話を聞きつけ絶対観るぞ、とマーキングしていた作品でもあった。

実際の出来は期待通り、いやそれ以上のものだった。テレビ画面に釘付けになるなんて、アニメ観ていても滅多にない。

やはり人間ドラマはいいものだ。

 

知らない人のために簡単に説明をすると、「日曜劇場 下町ロケット」は、あの半沢直樹ルーズベルト・ゲームで知られる池井戸潤さんの小説を原作としたTVドラマであり、半沢チームが制作している。

 

研究者の道を諦め、家業の町工場である佃製作所を継いだ佃航平がある日突然商売敵の大手メーカー=ナカシマ工業から特許侵害で訴えられ、取引先や、メーンバンクの信頼を失うなど窮地に落とされるところから話は始まる。

 

夢に向かう男たちの名言が熱い

 

佃航平(阿部寛)をはじめとする、モノづくりにひたむきな情熱を表した漢達の名言、名シーンに私は何度も心を打たれた。

 

ナカシマだろうと、佃だろうと、そんなことはどうだっていいんだ!皆がこれまで必死に培ってきた技術や志を、次の世代に繋げていってもらいたい。技術進歩が止まってしまったら、世の中の発展はない。

 

ナカシマとの訴訟費用に苦しむ佃製作所。だがその本当の狙いは佃製作所の株式の51%の譲渡、つまりは買収だった。ナカシマ工業の傘下に入るしか生き残る道はないと決断する佃が、開発部門の山崎光彦(安田顕)に思いを託す。これからも創り続けてくれ、と。

佃社長のモノづくりへの想い、その根底にあるのは技術によって人々を幸せにすることだった。大企業や、中小企業などという看板は関係ない、人のために尽くすことが佃航平のモノづくりに対するプライドなのだ。これは後に「佃品質 佃プライド」と会社のキャッチフレーズにもなる。

 

そうして、今回の件でケジメをつけて身を退くと言う佃を経理部の殿村直弘(立川談志)が引き止める。その台詞もアツい。

 

俺が銀行に入ったのは、能力や技術はあるのに、日の目の見ない企業を助けたかったからです。銀行員として、ものづくり日本の手助けをしたかったからです。

社長、あなたは夢に愛されている。
だから! 逃げちゃいけない。お願いだから、諦めないでください。
銀行員の端くれとして何百の会社を見てきた。
佃製作所は良い会社です! 守りたいんだ。

 

経費の削減のために出来る限りのコストカットをし、そのせいで周りによく思われていなかった殿村。だが彼がそうするのは佃製作所を守るため、佃航平という人間に惹かれたからだった。佃製作所を想う気持ちは誰にも負けてない、と思いの丈を吐露するシーン。トノさんが一番好きなキャラかもしれない。

 

夢にまっすぐ。

 

本作では「夢」というワードが頻繁に出てくる。このドラマを観ていれば、きっと共感したり、あるいはハッと気付かされたこともあったのではないだろうか。

この現代ニッポンで、自分の夢を堂々と言える人がどれほどいるだろうか。おそらく多くの若者たちは、あっても夢物語であると結論を下し、現実的な思考に至るのがほとんどだろう。それは、夢のハードルが大きければ大きいほど、その傾向は強まっていく。

好きなことを仕事にできたら、どれほどいいだろうか。

きっとアイドルに憧れた女の子は芸能界を目指すだろうし、スポーツ選手に憧れた男の子は必死で努力をするだろう。

声優、小説家、ゲームデザイナー。そういった芸術の世界に憧れる者もいるだろう。

だが誰もがそうであっては困るのだ。行政や経済やインフラは崩壊するし、コンビニで買い物なんてできないかもしれない。

誰もやりたがらない仕事を請け負い、人々の暮らしを支えている人たちが影で大勢いるのだ。現代社会はかろうじて絶妙なバランスを保っている。

 

私はかつて、夢に対しては否定的だった。どうせ叶いっこない、失敗した時のリスクを考えると、夢なんて到底追っていけない。

どこか冷めたような目で見ていた。

その意識が変わったのは、いや、目が醒めたと言ってもいいだろう。私の友人がゲームの専門学校に進むと聞いたことがきっかけだった。入学してから三年間クラスが一緒だったソイツと話をして、ゲームへの真摯な思いを感じ取った。

自分の夢を叶えるためとはいえ、実際にその道に進むという決断をすることは、並大抵のことではない。そんなアブナイ橋を渡ろうとするのは余程自信があるか、あるいは無鉄砲な馬鹿かのいずれかだ。その大きすぎる第一歩を踏み出した彼を、私は心から尊敬している。

 

夢に向かって努力をしている人たちは本当に魅力的だし、素敵だ。下町のトノさんではないが、自然と応援したいという気持ちが込み上げてくる。

人はもっと、自分の夢のために生きてもいい。

私の周りにもリアリストであるが故に夢を断念し、燻っている奴がいる。プロから見たらたしかに遠く及ばない腕前かもしれない。だが、それで萎縮しないで欲しい。もっと自分を信じて欲しい。

周りなんてどうだっていいんだ、大切なのは、自分が好きかどうかだ。

 

俺は全力で応援する。

 

下町ロケットの原作「下町ロケット」と、ロケットから人体へと挑戦をする「下町ロケット2 ガウディ計画」は小学館から大好評発売中だ。技術に関する知識がなくとも夢中になれる作品なので、是非おすすめする。

 

下町ロケット (小学館文庫)

下町ロケット (小学館文庫)

 

 

 

下町ロケット2 ガウディ計画

下町ロケット2 ガウディ計画